イエプロ・インタビュー vol.2 河合 止揚 (カワイ シヨウ)
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先週に引き続き、関西の建築写真家・河合止揚さんのインタビューをご紹介します。
アマチュアカメラマンが建築を撮る時の注意点やアドバイス、
大阪の町並みへの想い、
建築家へ託したい想いなどをお話し頂きました。
大阪 Photo by shiyo kawai
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プロフィール
河合 止揚(カワイ シヨウ)
アトリエ リベラ/河合 止揚写真事務所

1965 大阪生まれ
1988 大阪芸術大学卒業
1993 個展「ベトナム」 京都/ギャラリー・イシス
1998 河合止揚写真事務所開設
2000 個展「華僑の故郷、福建省」 大阪/ホリウチギャラリー
〜2003 日本建築協会「建築と社会」誌 表紙撮影担当
2005 個展「台湾、香港、大阪」 大阪/ ギャラリーka i
現在 建築写真を中心に活動
アトリエ リベラ/河合 止揚写真事務所
〒550-0015 大阪市西区南堀江3丁目9-21ネオハイツ南堀江705号
TEL/FAX:06-6541-5374
携帯:090-8656-0408
e-mail:kawai87shiyo@hera.eonet.ne.jp
★前回のお話はこちら
■割と僕は都市が好きなんです。
Q:かなり前ですが、中国の昆明(コンメイ)の写真展をされてましたが、あれは写真を撮るために中国に行かれたんですか。
A:学校を卒業して建築写真の事務所で勉強した後に、中国に2年間ほど行ってたことがあるんですよね。その間に厦門(アモイ)っていうとこに1年ちょっといて、昆明にも1年ちょっと行ってたことがあったんですね。その間に撮った写真です。
Q:やっぱり、建築がしっかりとあるところ、ある意味都会に魅かれてたんでしょうか。
A:厦門っていうところは昔のアヘン戦争以後に英国が開かせた港なんです。その異国情緒みたいのがあって、やや、神戸みたいなとこで、昔の洋風建築がいっぱい残ってるとこが面白いなと思って行ったんです。
昆明は、今、マラソンの高地トレーニングで有名ですよね。1900mくらいあるんですけどね。
Q:都会というイメージですけれどね。
A:割と僕は都市が好きなんです。
Q:やっぱり、人がいて、建物の移り変わりあるようなところが好きですか。
A:なんか変わっていくような、生きてるような感じがするんですね。
ヨーロッパなんかは100年前も今もあまりかわらないでしょ。そういうとこはあんまり、興味ないというか、生きてるようなとこが好きですけどね。どんどん変わっていったり。大阪はちょっと極端だと思うんですけどね、古いものがなんにも残ってない。なんか混在してる街が面白いですね。
Q:今、行ってみたい、撮りたいと思ってらっしゃるところはありますか。
A:久しぶりに香港とか。
人間の生きてるような街が好きですね、台湾とかも。
最近は仕事がない時は、大阪の夕方のどっかを撮ってるんです。鶴橋のガード下とか・・大阪をロマンチックに撮ろうと思ったらね、夕景しかないんじゃないかと・・。昼なんかいっこも撮る気がしない。今年の年賀状につかった写真なんかはうまくいったなという感じで。
ただ建築の竣工写真を撮るだけじゃなくって、大阪の街を都市っていうか街っていうかが、どうなっていくのかなっていうのを、見届けたいみたいな感じがあるんですけどね。
台湾 Photo by shiyo kawa i
A
Q:展覧会のご予定なんかは
A:また今年くらいにやるかもしれないですね。
Q:やっぱりモノクロになりますか?
A:そうですね。
大阪でやりたいと思います。以前は、大阪と台湾と香港、3つの都市で撮ったのでやったんですけど、今、大阪がどうなっていくのかがテーマというか、「少しでも、まともな風景を写真で残したいな」という気があるんですよね。
Q:東京とかには、あまり行かれないんですか。
A:撮ってみたい気はあるんですが、東京に居る人には、たぶんかなわないだろうなと。東京に居て、ものを考えてる人にはね。僕らは外からの人間になるので、それで撮れるということもあるんでしょうけど。太刀打ちできないだろうなと・・ちょっと行ってたくらいではね。
唯一勝てるのは大阪の写真じゃないかと思って。日常的にできることしかないと思うんですよね。生活してるから、なんらかを身体で感じてると思うんですよね。それが大切だと思いますけどね。
建築の写真もやるけど、社会とつながってるような、こういうことをしてることが大切なんじゃないかと思うんですよね。
建築の写真屋になったら、だめだと思うんですよね。写真っていうのはちょっとうまいとかね、そんなことはつまらない感じがするんですよね。でも割とそういうふうにとらえてる人が多いような気がするんです。
いつも大阪とはなにかとか、社会とはなにかとか感じて、そういう人が住宅を見てどう思うかをぶつけていかないと、面白くないんじゃないかという気がするんですけどね。でも、そういう風にしていくと、建築写真もやや批判めいたものになっていくのかもわかんないですけどね。
建築家が町並みを創っていくんではなくて、住む人なり、住んでる人の欲望っていうか、そういうのが町並みになり、国になっていくんだと思うんですよね。そういう意味では住んでる人、住人とか、大阪で人の意識が高くなっていかないと町並みもよくなっていかない。
Q:住宅はお客様の要望ありきですからね。
A:建築家がイニシアティブとれてないでしょ。ほんとは、建築家はもっと啓蒙活動をして、やっていったらいいいんでしょうけど。そういう意味では、「大阪の人はもっといい家建てよう!」とか、そうなっていったらなと思うんですけどね。あまりにも無力だと思いますね。自分でね。
Q:でも、建築写真として残してゆくっていうのは大切なことなので・。
A:僕の好きな画面って汚いとこばっかりなんです。
Q:そうなんですか。すごくきれいな写真を撮られてるイメージなんですが・。
A:反動なんです。(笑)建築写真はどうなっていくかわかんないですね。僕ら末端ですからね。
香港 Photo by shiyo kawai
a
■当たり前のことを当たり前に
Q:私たち素人が写真を撮る時に、もっているといい道具はありますか。先ほど三脚というのは教えていただいたのですが・。
A:そうですね。室内を撮るんなら、広角レンズはいりますよね。21とか24mm程度は欲しいですね。
まあ、あんまり建築写真の真似せずに、自分なりに見た目をやったらいいと思うんですけどね。やっぱり、三脚ぐらいは立てて、じっくりやって欲しいですね。室内なんかは特にぶれやすいですからね。
Q:建築写真は、きれいに撮るものっていう概念があるんですが。
A:綺麗に撮るのも面白くなくなってくるんです。むちゃくちゃなものを入れたくなったりね。放置自転車があったり、電線があったりするのは好きなんでけどね。仕事となると、ね。
Q:スタッフに、現場に行くついでに写真を撮ってきてもらうのですが、荷物が入っていたり、ごみが入っていたり、余分なのものが写りこんでいてがっかりすることがあるんですが。
A:僕らなんかもカメラバッグが入ってたりするんですよね。それがなかなかね。
僕が東出さんに教えてもらってる時に、トイレのドアをしめるとか。車の運転手みたいなこともしたんですが、それをね。「ちゃんとできたらいい写真撮れる」っていわれたんですよね。それは何かっていったら当たり前のことを当たり前に。トイレのドアを閉めるっていうことができない人はね、ファインダーもちゃんと見れないんです。で、失敗するんです。それができるようになったらできるんです、不思議に。たぶん失敗する人は、トイレのドアがちゃんと閉められないとか、電気を消せない人なんですよ。そういうことにもちゃんと気が付いて、ちゃんとできる人でないと、たぶん建築写真はできないと思いますね。
Q:これまでに、すごくいい写真が撮れたと思っていたのに、失敗してしまっていたなんてことはありますか。
A:ありますね。バーのカウンターを撮ってたんですが、観葉植物がかぶってたんですね。暗いところで広角で撮ってたんですが、広角って得てして暗いんですね。それで観葉植物がバサっと入ってて、それはショックでしたね。
そんなにいやな感じで入ってなかったので、それはそれでいいって言われたんですけど、僕としては失敗ですよね。
撮影なんかが、あいたりするとたるむんですね。だから、あえて靴をそろえるとか。そういうことをやってないと失敗すると思いますね。
Q:メインストリートに面したビルなんかはどこから撮られるんですか。通りがあるし、交通量もあるので、ご苦労もあると思いますが・。
A:分離帯から撮ったり、向かい側のビルに登らせてもらったり。
Q:ちょうどいい距離から狙えない場合は、レンズで調整ですか。
A:そうですね。都市においては決まってくるんですよね。建物によっては、狙いたい位置に障害物があったりするので、難しいんですね。下から見上げる写真とかいろいろですけどね。都市は難しいですね。
Q:交通量の少ない早朝などに撮られるんですか。
A:南面だと一日中、日があたってるので自由度が高いですけど。最近はあんまり考えないようにしようと思って。車は停まったりするしね。たいがい、一番いい時に来てしまうんです。いない時にとは思うんですが、しかたない時もある。色や車種なんか、車の質にもよるんですが、いい登場人物だったらいいんですけど。人でも無彩色のビルに綺麗な色の服を来た人なんかだと面白いでしょ。なんでも無くしたらいいというわけではなく、それはバランスですね。
Q:建築は笑ってくれたりするものではないんですが、表情とかっていうのはあるんでしょうか。
A:自然の植栽や天気のいい時や悪い時で表情は違いますね。そこはあえてフィルター使ったりというのはないですけどね。自然の要素、太陽とか月、火、水、木とそういうものが、はいってくるほどいいと思いますね。雪、花なんかもそうですが、いろんな要素があったら深みがでてくると思います。
Q:素人が撮るときに失敗しがちなことってありますか。
A:太陽をよく見ることでしょうね。東面の撮影なのに、朝行かなかったらどうしようもないですよね。そういう単純なことですね。
Q:周りの環境で、光が全くあたらないところと、すごくあたるところと2分割されてしまうような時は。
A:そういうのを利用してドラマチックに撮るとか・・。まあ、真っ暗になるところがあるとそれも問題なので、そういう時は全くあたらない時に撮るとかね。どっちがいいのかは疑問ですけどね。
日があったっているところとあたってないところの差が大きいのは難しいですね。そういう時は全然あたってない時にもう一枚撮っておく。
ビルなんかは、やりようがないという風にあきらめつくので、制約が大きいと楽ですけどね。周りになんにも無くて、なんでもできるような現場だと逆に困るんじゃないかと(笑)
■「町並みをどうするのか」という答えをもっている人に出会いたいなと
Q:最後に建築家にむけて、なにかメッセージはありませんか。
A:かっこいいとか、ちょっとデザインしたとかもいいんですが、愛着がわくようなものを創って欲しいですね。創った時点で一番いいんじゃなくて、どんどんよくなっていくようなものをね。そうなってくると使ってはいけない素材なんかもでてくると思うんですよね。経年変化でよくなる素材とそうでないものがあると思うんですよ。
じっくりと。
ちょっとかっこいいとかだと飽きると思うんです。
今、住宅が平均30年で壊されるとききますが、ビルなんかでもそんなもんですよ。せめて100年。住宅でも7.80年くらいは・。
「もつ」っていうんなら戦後の焼け残ったようなものでももつんです。でも、「もち方」が問題だと思うんですよね。みんなに愛されていくのか、「早く壊したらいいのになぁ・・」というのと、「もつ」っていう意味では同じですが、愛されて「もつ」ものを創ってほしいですね。それがどれだけあるんだろうと思いますね。
Q:そういうものができたら、竣工時だけでなく、ずっと撮り続けていきたいと。
A:そうですね。割とちょっとかっこいいとかいってる建築家が多いと思うんですよ。その結果みんな同じに・・。
建築家の人はみんな高学歴で頭もいいけど、これからは丁稚みたいな人がでてきたら面白いと思いますね。高卒で入ってお茶汲みみたいなことをやってるような子に面白いのがでてくるんじゃないかと思うんですけど。でも、そんな子は設計事務所にはいないです。即戦力の高学歴の子をとるでしょ。ある程度、計算はできるんだろうけど本当の建築がわかるのかなと・。お茶汲みしたり、撮影なんかでも「おい、お前手伝って来い」みたいな、そういう子が伸びるんじゃないかと・・。無駄なことをしてるようなね。
建築家は関係ないと思うんですが、僕は住吉区に住んでいて、途中、西成区とかを通るんですが、昔の木造の長屋が壊され、そこに、1階が車庫で2.3階が住居になっている、石貼り風や、パステル調の、すごく表面的なデザインの住宅ばかりに変わってきてるんです。これから20年、30年たつと町並みはどうなるのか心配になります。
建築家は唯一そういうのにこたえられる立場というか、おもしろいんじゃないかと思うんですけど。ああゆうものを阻止しようという動きはあんまりないと思うんですよね。大阪の町並みをどうするんだという答えをもっている人に出会いたいなという気がしてるんですけど。
それを考えていくとデザインがちょっといいとか、そういうことはどうでもよくなっていく気がするんですよね。
外壁を統一するとかそんなことはあんまりどうかと思うけど、木造のちゃんとしたいいものと、ちがう素材でもちゃんとしたいいものなら隣に建っててもいいと思うんですよ。いい加減なものばっかり集まるからダメなんですよね。ある程度、グレードの高い、志の高いものだったら多少ばらばらになっても、それはそれで面白いですけどね。
もっといいものがありますっていうのを提示してね。それが建築家の役割だと思うんですけどね。
金持ちでいいものを建てる人は勝手にいいのを建てるんでね。草の根のところをどうしていくか答えがあればね。
絶対いけると思うんですけどね。そういう若い人がすくないような気がしています。
今、町並みを見ていると、なんであんなことになってゆくんだろうって。それをいうと、そりゃ買う人がいるからなんですよね。そうなってくると、住民の意識をもっと啓蒙していくような作業がないと、いけないと思うんですよね。
建築家にはそういうこともやって欲しいと思いますね。
大阪 Photo by shiyo kawai
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編集後記:特に大阪の町並みへの思い入れの強い河合さん。ソフトな物腰からうける印象とはちがい、骨太なお話をうかがうことができました。